エクセルでトレードシステムを自作し始めたのが2007年末、2008年後半から運用開始、そして現在に至ります。
この間、なんとか撤退せずに運用は継続してきましたが、
長期に渡り通用するシステムを開発する困難さとシステムを運用し続ける困難さ、
この二つをたっぷりと味わう羽目となりました。
シストレを志向してからほぼ10年ということでいい区切りですのでその辺のところをまとめておこうかと思います。
早速ですが、シストレでなかなか勝てない原因(理由)、結論からいきますね。
1.システム自体の能力不足
2.長期ドローダウン時のメンタルダウン
3.当初資金の不足等
パッと思いついたのはこんなところです。
システム自体の能力不足
まあこの部分は根本的な問題。
一定水準以上のものでなければ、市販品を購入して運用しないでしょうし、自作品もこれでよしとはしないでしょう。
運用開始時には一定水準以上のパフォーマンスを持つシステムと認識して運用を始めます。
ところが、ほとんど場合、運用後パフォーマンスが低下して挫折してしまう。
考えられる一番の原因は、不十分なバックテストデータ。
どのターゲットでも局面を大別すると次のような4つのステージに分けられます。
日経225先物を例にとればこのように↓。
(注:2015年後半からの局面を天井期として捉えていいのか上昇期の途中のもみ合いと捉えていいのかは私にはまだ判断がつきません。)
・第1ステージ:低迷期(グリーン)
・第2ステージ:上昇期(ブルー)
・第3ステージ:天井期(ピング)
・第4ステージ:下降期(レッド)
各ステージ、一概には言えませんが、
それぞれ、
第1ステージはトレンド極小、ボラ低、
第2ステージはトレンド大、ボラ高、
第3ステージはトレンド小、ボラ低~中、
第4ステージはトレンド極大、ボラ極高
というような傾向性を有しているかと思います。
バックテストデータが短過ぎて、
極端な話ですが、第4ステージだけのデータにフィットさせてしまったシステムは、
局面が変化し傾向性のかなり異なる第1ステージに突入してしまえばパフォーマンスが急速に悪化してしまう可能性が大となります。
いいパフォーマンスだと思って購入、
ワクワクしながら運用を開始、
最初は好調でウハウハ、
ところが局面が変化していくことにシステムが対応できなくなっていき、
最終的にはシステムが機能しなくなり、大損。
だいたいがこのパターンでやられます。
バックデータにはこの4つのステージが全て組み込まれていることが理想です。
但し、
4つのステージの1サイクルは最低7~8年位にはなりますのでデータの入手が困難な場合もあるかと思います。
そのような場合はトレンドが大きいステージとトレンドが小さいステージの双方が含まれている事、それがバックテストデータとしての最低条件になるかと思います。
市販システムであれ、自作であれバックテストデータの不備は致命的です。
長期ドローダウン時のメンタルダウン
仮に運用しようとしているシステムが前述のバックテストデータの問題もクリアーされており、パフォーマンスも特に問題ないシステムだったと仮定します。
ご存知のように、いかに優れたシステムでも当然右上がりに一直線に利益が積み重なっていくわけではありません。
必ずドローダウンが発生します。
ドローダウンが発生してからドローダウンが解消するまでをフラット期間と言いますが、
その長さは半年以上に及ぶこともあります。
1か月位で解消できればいいのですが、それが2か月、3か月と続きフラット期間が長引いてくるとどうしても徐々にシステムに対する不信感が芽生え、心は不安感に支配されていきます。
そしてその日々の連続に疲弊していきます。
そこを我慢して忍耐強く運用していれば結果的にドローダウンを解消できたものを、弱き心に負けて途中で運用を中断してしまう。
私も過去、何度もこのトラップにひっかかっています。
私の場合、システムは自作ですので仕様はすべて把握していますから、
このシステムの仕様であれば今の局面には合わないのでこの停滞はやむを得ない、ここが我慢のしどころ等とある程度自分を納得させることができます。
それでもやられます。
市販品はスペックがほとんどブラックボックス、そうなってくると拠り所はありません。
ので、まず、確実にやられます。
私が市販品に価値を見出せない理由の一つです。
(それ以前にスペックがブラックボックスのものを信用することはできませんが)
裁量トレードの心理的負担を避けるために、シストレに移行したとしても結局は心理的な壁に突き当たってしまいます。
ドローダウン時のメンタルの問題、シストレでなかなか勝てない大きな要因の一つだと思います。
当初資金の不足等
後に生活費として出費しなければならないお金や借金したお金等を投資の元本として充当する行為は最悪です。
このケースもまず、失敗します。
システム運用開始後、順当に利益を積み重ねてくれればいいのですが、その逆、運用開始とともにドローダウンが発生しフラット期間が長期に亘ってしまうケースもあるわけです。
その際、後々ドローダウンが回復するにしてもその時点では不確実、実際に日々口座からお金が消えていくわけですから、メンタルがやられて継続できません。
余裕金ですらやられますからね。
最後に
以上、勝てない理由を探ってみましたが、ではではいかにすればシストレで勝てるのでしょうか、まとめてみました。
まず、
資金面としては
1.運用開始前までにより多くの余裕金を作っておく。
2.実戦ではその余裕金の一部(例えば余裕金の20%と決めて)のみを使用する。
余裕金の全てをリスクに晒すなどは言語道断です。ポジションサイジングを誤ればあっという間に撤退です。
特に複利で運用しようとする場合は、実戦前にこの投下資金割合の問題をきっちりシュミレーションしておかないと、運用継続は困難です。
複利ですから投下資金割合が高ければ、リターンがかなり大きくなる可能性はあるわけですが、その反面、ドローダウン率も高くなるというリスクも増大します。
実戦前には、最低、手数料、平均スリッページ、年度末の利益に対する税金20%等を考慮した資金シュミレーションを行い、その上でMAXドローダウン率が一定以下に収まるような投下資金率を設定しておいた方がよろしいかと思います。
どの程度までのドローダウンに耐えられるかは個人差があると思いますが、私の場合はなんとか耐えられて20%前後ですので、実戦に突入して仮に5%程度上乗せされてもいいようにバックテスト時の資金シュミレーションにおいてMAXドローダウン率を15%前後、平均では10~12%程度になるような投下資本率を探し出しています。
次に
システムのパフォーマンス評価という点では
1.運用しようとするシステムの対象ターゲットの日足データを手に入れて、データを分析(価格推移、値幅推移等)する。
後述のバックテストデータやパフォーマンスの検証に必須です。
自作の場合は当然行うことですが、市販品の場合、そこまでやられて購入する方は少ないのでは。
しかしやっておかなければ、提示されているデータを鵜呑みにして高価な買い物をすることになります。
後々後悔しない為にも必要最低条件です。
2.バックテストデータに問題がないかを確認する。
期間が短過ぎないか、複数のステージがその期間に含まれているかをデータ分析の結果と照らし合わせて確認しておきます。
3.年度毎、月毎のパフォーマンスが妥当な数値か否かを確認する。
データ分析の結果と提示されている年度毎、月毎のパフォーマンスを照らし合わせてみて妥当か否かを判定します。
例えばトレンド大、ボラ大の時期のパフォーマンスが低く、トレンド小、ボラ低の場合のパフォーマンスが高いような時は少々うさん臭ささを感じます。
システムがトレンドフォロー型であれカウンター型であれ、システムのパフォーマンスはトレンドとボラにほぼリンクしますから、それに該当しないケースが多く見られる場合には提示されているパフォーマンスの信頼性を疑ってみた方がいいかもしれません。
4.勝率とPORのバランスに問題はないかを確認する。
PFが同じであれば、勝率とPORはトレードオフの関係になります。
勝率が極端に低くても、PORが極端に高ければ結果的には利益を上げられますが、
勝率があまり低いとメンタルが持たない可能性が高くなります。
5.バックテストの取引回数に問題がないかを確認する。
少な過ぎの場合はたまたまという可能性があり、あまりに多過ぎた場合は実戦においてはスリッページ等で利益を消してしまう可能性が考えられます。
6.最大ドローダウンと最長フラット期間を把握しておく。できればどれくらいのドローダウンがどれくらいの頻度で発生しているかというようなところまで。(重要)
例えばこんな感じで↓
このグラフから、
・最大ドローダウンは1200円+α位までなる可能性がある
・600円以上のドローダウンは年に3~4回位は起こりうる
・半年近くフラット期間(ドローダウン発生期間、最大利益を更新できない期間)が継続する可能性がある
・2~3か月のフラット期間は常に起こりうる
・2016年以降、フラット期間が長期化している→難しい局面になってきている→システムが局面に合わなくなってきている可能性がある
等の貴重な情報を得る事ができます。
これを知っているだけでフラット期間における心構えが違ってきます。
システムのパフォーマンスというとついついシステムの利益ばかりに目が行きがちですが、この数値をきっちり把握できているか否かが運用の継続という点では大きなポイントとなります。
運用時のメンタル維持の為にも、どのような状況になったらシステム運用を中断または中止すべきかを判断する為にも重要な事です。
そして、最後に
メンタル面
1.把握した最大ドローダウン値をベースに許容ドローダウン値を設定し、その設定値を上回らない限りシステムを信じて運用し続ける。
2.日々の戦いの結果に一喜一憂することのない、そして反応することのないメンタルタフネスを手に入れるべくメンタルトレーニングを継続する。
前項で、許容ドローダウン設定値を上回らない限りシステムを信じて運用し続ける。と記述していますが、これがなかなか難しい。
日々の戦いの結果に反応していると、知らず知らずのうちにメンタルはダメージを受けてしまいます。
仮に五分五分の戦いが続いているとしてもです。
同じ規模の利得と損失を比較した場合、人は損失の方が1.5倍から2.5倍重大だと感じてしまいます。(行動経済学のプロスペクト理論の価値関数)
結果、メンタルが徐々にダウン、ドローダウンが増え続けるということだけで恐怖心を覚えてしまい、許容ドローダウン設定値を上回っていないにもかかわらずシステムを信じられなくなってしまい運用中断に至ってしまいます。
運営者もフラット期間が長期化した時によくやってしまった事(修行が足らないので現在でもたまにやってしまう事)があります。
個々のトレードには固執してはいけないと日々自分に言い聞かせながらシステムを運用しているわけですが、徐々にダメージは受けてしまうようでついつい次のような愚かな行為をしてしまいます。
心を動かしたくないので、極力ロボットの画面は見ない事にしているのですが、いろいろな原因でシステムが止まってしまうこともありますから、日に何度かはチェックします。
その際、例えば、裁量的にはここから「買い」はあり得ないだろうと思える時点でシステムが「買い」でエントリー、おまけに含み損が出ていたりすると、もう心中穏やかでなくなってしまうのです。
心が超ネガティブになって、「さらに損が膨らみドローダウンが大きくなってしまう。」としか思えなくなってしまうのです。
後で考えるとなんで?と思うのですが、その時は弱き心に支配されてしまうのでしょうね、「ここで損切しておけば、楽になるぞ。」という悪魔のささやきに負けて勝手に建玉を決済してしまうのです。
結果的には、ロボット通りにしていればその後、流れが変わり取引は利益で終わっていたものを、自らの手で無駄な損失を確定してしまい、かつせっかくの利益を得る機会も失ってしまう。
一番やってはいけない事の一つです。
ある程度、含み益が出ていた場合も、「ここで決済しておけば、かなりドローダウンが減らせるぞ。」というささやきに負けて勝手に決済、結果的には利益はさらに伸びて、結果得られたであろう利益の喪失。
こんなことをしていたら勝てませんよね。
反応しないトレーニングを続け、反応しない心を手に入れることはシストレで勝つ為の最低条件の一つかと思います。
フラット期間の長期化が引き起こすメンタルダメージの克服は運営者にとっても大きなテーマの一つです。
相場の心理という点では、一冊位はその分野の本に目を通しておいた方がいいかも知れませんね。まあ、読んだからメンタルが強くなるわけではありませんが、自分の心理を冷静に分析する術を得られますし、その知識はその後のメンタルトレーニング&the修行に生きてくるかと思います。
ご参考までに、相場の心理関係で読んだ本はこちら↓
ゾーン 「勝つ」相場心理学入門(マーク・ダグラス著)
海外の本の特徴で、表現がくどい、引用されている例がピンとこない等の問題はありますが、なかなか良書だと思います。
「ゾーン」、明鏡止水の境地にいかにすれば辿り着けるかがテーマの本です。
この分野ではベストセラー「投資苑」を筆頭に、「トレーダーの心理学」「規律とトレーダー」等の本も出版されていますが、どれも内容的にはあまり差異はないかと思いますので、ピンときた本に目を通しておいて損はないかと思います。
以上、当たり前と言えば当たり前のことばかりを、くどくどと書いてしまいました。
しかし、当たり前の事が、なかなかできない。
システムトレードというと打出の小づちように楽をして儲かるというイメージが強いですが、そんなことは全くないと思います。
決して楽ではない。
メンタルが強くなければまず勝てない。それは裁量トレードでも同じだと思います。
私は歴史小説や剣豪小説をかなり読みますが、剣豪達はただただ強くなる為に日々辛い修行を重ねていきます。時には命をかけて。
トレードも同様、楽をしていては勝てない。
ゴールは遠い、勝つ為にはまだまだいろいろな修行が必要なのだと痛感する日々です。
勝つことは容易ではないと思いますが、少なくとも努力をすれば勝つ可能性を高める事はできます。
同好の皆さん、ストレスフリートレードを目指してお互い頑張りましょう!
そして無理ない程度に末永くトレードを楽しんでいきましょう!